せっかなくので、やってみた。

日々のあんなこと、こんなこと、せっかくなのでやってみた

乗っ取り方式でX68とnintendo switch両方使えるアケコンを作ってみた

この記事は令和の時代もなお続くX68000用ディスクマガジン「ハリキリマガジン」の 41号(2020年7月)に収録していただいた内容にリンク等の修正を加えたものです。(タイトル「アケコンのススメ」)

また、以降の説明で改造した内容や選定したコントローラ類は間違った記述があったり、正しく動作しないかもしれません。 参考にされる方は自己責任でお願いします。

アケコンのススメ」

皆さんは68でゲームする時、どんなコントローラーを使ってますか?
我が家は長らくPanasonic製のMSX用パッドを使用していました。(恐らくFS-A1と同時に発売されたやつ?)
数年前に電波のXE-1proをたまたま安くゲットできたのですが、思っていたより小さくてワイン持ちに慣れている私にはちょっと使いにくく感じていました。

話は変わってNintendo switchですが、PS4に負けじとこちらもアーケードの復刻が増えてきて、ナムコミュージアムコナミアーケードコレクションダライアスなど、自分のラインナップも増えてきました。
そうすると、やっぱりジョイコンではなく、ちゃんとしたアケコンでプレイしたいという欲望が湧いてきます。
アケコンと言えばホリのリアルアーケードシリーズ(RAP)ですが、レトロゲームメインの私にはさすがにちょっと大きすぎるので、Mayflashや8bitdoなどのアケコンがいいなーと思いつつ、せっかくアケコン買うならどうにかX68でも使えないか、あれこれ妄想してみました。
で、思いついたのが以下の案です。

1.switch用Bluetoothアケコン + レトロレシーバー
※以降のリンク先はAmazonアフィリエイトになっていますので、けしからん!という方は、アイテム名をGoogleなどで検索してください。

  • コードレスですっきするが、Bluetoothなので充電を気にする必要がある。
  • あと都度接続先を切り替えたりなど、意外とペアリングの手間がかかりそう。そもそもswitch用のBluetoothアケコンが高い。(1万円以上)

2.switch/PS4兼用有線アケコン + スーパーコンバーター

  • こちらも導入コスト高し。有線だが変換をかますので、ラグも心配。
  • PCエンジンにも使えるのはメリット高い

3.PS1/2コントローラー +スーパーコンバーター(PS1/2->switch)
  + PS1/2->Atari変換(mobile-accessory-net)

sv35.wadax.ne.jp

  • 中古で安く入手できそうなPS用のコントローラーが使えるものの、switch/68ともどっちも変換必要。
  • 導入コストは他より比較的安めで済みそうだが結局こちらも変換器のラグがどれくらいか不明。
  • あと、PS1/2->Atari変換は貴重な存在。在庫限りなので気になる方は手に入れておいた方が良いかもしれません。

この様に一長一短かつ、どれも結構な投資が必要です。
2が割とベストな組み合わせかと思いますが、結局自分が欲しいのは、ラグの心配がなく、低コストで両環境で使用できるアケコンという事が分かり、なかなか購入に踏み切れない状態でした。

そんな中、ネットで中古のアケコンを探していると、既製のアケコンに他機種用のコントローラーの基盤と接続ケーブルを移植する、いわゆる「乗っ取り」という手法があることを知りました。
物理的にケースに収まる必要があるものの、使用したいハードのコントローラー基板さえあれば、どんなコントローラーでも利用できるのです。
しかも、配線さえ気を付ければ、複数のコントローラ基板を同居させることもできるという事を知ってしまったのです!(当然その分配線も増えます)
これでswitchと68兼用の、ラグの無いコントローラーが手に入る!しかも中古でそろえれば格安で!

幸いにも、我が家にはスパII(もちろん68用)にメガドラの6ボタンパッドを2つ当時購入してずっと保管していたので、ATARI用のコントローラー基板はこちらを使用することにしました。せっかくアケコンを導入するなら、スパIIもアケコンでプレイしたいですからね。
今の中古の相場を見ると、メガドラの6ボタンパッドは非常に貴重なのですが、利用頻度も少ないので1つ使用することにしました。
メガドラ->68の変換は、当時自作していたチェルノブアダプター互換の変換器(というほどのものではありませんが)があるので、こちらを使用します。

switch用のコントローラーは、ネットで安いのを調べたところ、WiiU用のポッ拳コントローラーが実はswitchにも対応している事を知り、早速中古で入手しました。(しかしこれが後で大変な作業になる羽目に…。)

あとは乗っ取りするアケコン本体の方ですが、こちらは気長に中古品を物色しました。
初めはサターン用のバーチャスティックがアストロ筐体のデザインを踏襲していてかっこいいので狙っていましたが、人気の高い商品らしく、なかなか安値で入手することができませんでした。(だいたい4-5千円くらい?)
うーん、昔ハードオフのジャンクに出ていたのを見かけたことがありましたが、サターン用という事で完全スルーしていました。あの時気が付いていれば。

他に良さげなコントローラーを探していたところ、PS1/2用のnamcoアケコンもありました。
バーチャスティックと比べるとデザインは地味ですが、往年(割と後期?)のnamcoテーブル筐体を連想させる黄色のスティックとボタン、そしてやはりnamco世代としては、namcoのロゴがプリントれているだけでもかっこいいと思えてしまう。(笑
なので、こちらも候補としました。
ただバーチャスティックより年代的に古いようで、状態の良いものがなかなか出なかったのですが、粘って結局こちらを入手しました。
(箱には鉄拳が記載されていたのでPS1初期のものかもしれません)
決め手となったのは、ボタンの数です。
というのもポッ拳コントローラーのボタンがA/B/X/Y/L/ZL/R/ZR/+/-の10コ(本来のswitchコントローラーはこれにホームを合わせた11コ)に対して、バーチャスティックは9コなので1コ足りなくなってしまうのです。
穴あけ加工してボタンを追加しても良いのですが、結構大変そうですし、namcoコントローラーは初めから10コなのでこの手間が省けます。ただ、L1/L2ボタンが小さいのでゲームによっては不向きがあるかもしれません。

かくして材料は揃いました。あとは分解して配線です。

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メガドラパッドは一緒に撮り忘れました

まずはnamcoコントローラーの裏蓋を外します。
ボタンの上にPS用の基板が半田付けされているので、半田を溶かして外しました。レバー側のコードも端子に半田付けされていたのでこちらも外しました。
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レバーのコードを外す前です。select系ボタンのコードはコネクタ部を切り取ってそのまま流用しました。

今まで知らなかったのですが、コントローラの各ボタンやレバーは、プラス(VCC)とマイナス(GND)の端子があり、ボタンを押下する(レバーは倒す)ことにより、配線がつながる仕組みとなっていました。
パッドの場合は電気を通すゴムの様な素材がボタンの下に入っていて、押下することにより基板のVCCとGNDの端子に密着、通電し、押下を検出していました。
なので、(例えばボタンの場合なら)パッドから取り外した基板のVCCからアケコンのボタンのVCCへ配線し、ボタンのGNDから基板のGNDへ配線することにより、アケコンのボタン押下でパッドの基板がボタン押下したと判定できるようになります。
(用語は詳しくないので間違っているかもです。)
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今回は、switchのコントローラー基板とメガドラのコントローラ基板のそれぞれのVCCをアケコンのVCCへ、アケコンのGNDからそれぞれのコントローラ基板のGNDに配線することになるのですが、ちょっと注意が必要です。
というのは、ネットで調べたところ、ボタン押下(スイッチをON)した時に両方のコントローラ基板に通電してしまうので、誤動作する可能性があるのだそうです。
なので、それぞれの基板に電気が逆流しないよう、ダイオードを入れると良いとの事でした。
ダイオードは電流の流れを一方通行にする部品というのを、今回初めて知りました。(中学とかで習っていたのかもしれませんが覚えていないです。)
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こちらのサイトのまんまですが、非常に役に立ちました。
gamest.at.webry.info

なので、初めの作業はダイオード入りのコードを作成することです。
上記のサイトにある通り、購入してきたダイオード(1N4148)の両端にコードを半田付けし、絶縁の為に収縮チューブでダイオードをカバーします。
1本は簡単に作れますが、各ボタン、レバーで14本、さらにコントローラ基板2つ分なので合計28本作成するとなるとなかかな大変な作業でした。
(SELECTやL1/L2はメガドラパッドでは不要なのですが、念のため作成しました。)
今思うとダイオードをの足をもっと短くしないと、何かの拍子にポキッと折れてしまいそうですね。。。
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(写真では既に加工済みですが)さらに出来上がったコード2本の片側をまとめて平型端子(メス)に圧着します。
アケコンのボタン、レバー側も平型端子(オス)を半田付けしてあり、将来的にボタンやレバーを交換する際に取り外ししやすようにしました。
作業中、ボタンを2つ壊してしまったので、秋葉原の千石商会ラジオデパート店で購入したボタンに入れ替えています。
セイミツ工業のφ30 はめ込み式(@\240) ですが、こちらの方が少しクリック音が低い(主観ですが静かというわけではない)のと、若干黄色が濃いです。
2つなので、ちょうど68で使用した時のA/Bボタン部分に使用することにしました。
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アケコン側のボタン、レバーのGNDはSCSIの様な感じで数珠繋ぎに全て結線し、最終的に2本のコードに集約してそれぞれのコントローラ基板の適当な1箇所のGNDへ配線することにしました。
こちらも知らなかったのですが、GNDは各ボタンに配線する必要は無く、どこか1箇所のGNDにまとまっていても問題無く動作するみたいです。機器によってはだめな場合もあるようですが、ポッ拳コントローラー、メガドラパッドは問題ありませんでした。

次にコードの反対側をコントローラ基板に配線してゆきます。
メガドラパッドを分解し、基板を取り出したあと、各ボタン、方向キーのVCC端子の黒い部分をヤスリで削り、銅板を露出させます。
GNDは一か所で良いので、配線しやすいボタン(今回は左キーと予備でスタートボタン)を削りました。
これで半田が乗るようになるので、コードを半田付けしてゆきます。その後、半田が外れないようにグルーガンで固定しました。
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ポッ拳コントローラー基板の方はボタンのVCC部を削らずとも、その手前に丸い銅端子が露出していて、ここに半田付けできる状態になっていました。 こちらのサイトにボタンの対応が写真で解説されていて、非常に助かりました。
pomegd.hatenablog.com

半田付け作業は簡単に終わり、いざ確認しようと基板を持ち上げた瞬間、半田付けした部分が銅端子ごとポロっと取れてしまいました!しかも3箇所もです!!
外れたところを見ると、銅の金属部分が完全に剥がれてしまって、再度半田付けができない状態になってました。
68のコンデンサ交換でいう「パターン剥がし」の状態です。(泣
ボタン部分を削れば銅端子は見えますが、剥がれてしまった部分はボタンとチップの間なので、もうボタン部分も通電しない状態です。
もう1つポッ拳コントローラーを買うしかないかと諦めかけましたが、ダメ元で剥がれた端子より少しチップ側の表面をカッターでけずると、銅端子が見えました。
Windows10に繋いで、銅端子にコードを接触させると、ボタン押下の反応があったので、ここに半田付けできればなんとか復活できそうです。
(思わぬ誤算でしたが、ポッ拳コントローラーはWindows10でも普通にゲームコントローラーとして認識してくれました。)
しかし削った部分は1ミリもないくらいの細さで、とてもコードの銅線をつなげられるほどの半田が乗りそうにはありませんでした。
そこで一旦ダイオードを切り取った足を削った部分に半田付けし、さらに足部分にコードを半田付けした後、速攻でグルーガンで固定し、何とか繋ぐことができました。
特にXボタンは心が折れそうなるくらい何度も失敗しましたが、お陰で68のパターン剥がしをやっても、落ち着て対処できそうです。(笑
ちょっと基板を歪めたら外れてしまいそうですが、いまのところ何とか持ちこたえてくれています。
ちなみにここは撮影どころではない位焦っていたいので、写真がありません。(笑
配線後はこんな感じです。
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そんなこんなで配線と動作確認は完了し、最終段階のケース収めです。
このコントローラーは、手前側が薄くなるよう傾斜がついているので、普通のアケコンよりかなり狭く、ぎゅうぎゅうの状態です。 f:id:moneci:20210131172526j:plain

構想時ははPSの基板も残して3機種マルチも考えたのですが、早々に諦めました。(笑
コードを挟まないよう蓋をしめて、遂に完成です!

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正面
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後ろから

これでswitchと68で快適なアケコンライフが楽しめるという事で、早速68と自作の変換器経由で接続し、スパIIを遊んでみました。
ワイン持ちもしっくりくるし昇竜拳も簡単に出せる!(ウソです、春麗使いなのでリュウはへたくそです)
それでもパッドより各段に操作性が良い!
この調子でグラIIも!あれ、自機が勝手に左へ移動する。。。ボタンも反応しない。。。
そうでした、変換器を使っていてもスパII以外はまともにコントローラーが動作しないのを思い出しました。
(スパIIブームが過ぎた後は、ずっとMSXパッドを使用していたのはこの理由でした。)

しかしネットの情報ではメガドラパッドをMSXで使う情報が結構あります。
68とMSXATARIコネクタの仕様は同じはずなのに、なぜ68だけ動かないのだろう。。。
おかしいなと思いつつ、MSXの配線図と自作変換機の配線を見比べてみました。

[Saiey様のサイトから] sai.cside.tv

X68k側(オス)
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1 2 3 4 5 6 9 7 8
メガドラパッド側(メス)

確か電クラに掲載された情報で私も同じように作成したと思います。

MSXで動作確認情報のある配線はこちら
[ギルだめス様のサイトから] ch.nicovideo.jp

MSX側(オス)
1 2 3 4 5 6 7 8 9
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1 2 3 4 5 9 6   8
メガドラパッド側(メス)

自作の方は9本すべて接続しているのにMSXの配線方は1本使ってないぞ。配線も微妙に違う。。。
そうです、スパII用の変換(チェルノブ互換)の配線と、2ボタンパットとして使用する場合の配線の仕方が異なっているのでした。
早速、変換器の片方(こちらもパッドとセットで2つ制作していた)をMSX仕様に配線を変更したところ、問題無く反応してくれました。
20数年来、この謎に気づきませんでした。もっと早く知っていればメガドラパッドも活躍しただろうに。。。
ちなみに、私の作成した変換器のコネクタ部分は、カバーを装着すると、カバーの出っ張りが邪魔して68側に刺すことができなくなってしまうので、配線むき出しの状態で使用していました。
無理に力をかけると、コードが切れてしまうので、68本体への抜き差しに非常に気をつかったので、この事もそのうち使用しなくなってしまった一因でもあります。
今回配線を変更したついでに、コネクタの補強もかねてコネクタ部分をプラ板で囲み、中にグルーガンを流し込んで超適当な持ち手部分を作成しました。これも20数年前には思いつかなかったワザです。(笑
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これでswitch/68両対応のアケコン制作は無事終了しました。
ちなみに、68で使用する時は、6ボタンあるうちの下段右から2つ(〇とR2)がB/Aボタンに割り当てられます。
switchの方も元々専用コントローラーの基板を使っていたので、問題なく利用できています。
2機種対応という事で配線が大変だったり、思わぬトラブルみも見舞われましたが、出来上がったコントローラーはシューティングはもちろんの事、アクションゲームもとても操作しやすく、パッドでプレイするより明らかに上手くなった気がします。これであと10年は戦えそうです。(笑
あと、配線の変更でメガドラパッドが2ボタンコントローラーとしてちゃんと利用できる事が分かったのも収穫でした。

68で使用するには一緒に変換器を作らなければならない手間があるものの、3ボタンのアケコンメガドラの3ボタンパッドは数百円で売られていることもあるので、6ボタンや複数機種対応に拘らなければ、手間も少なく格安で制作できるでしょう。
(なにげにMSX用のパッドの方が値段が高かったりします。あとメガドラの連射付きパッドは上手く動かないかもしれません。)
興味のある方は是非自分だけのアケコンを制作されてみてはいかがでしょうか。

ちなみに今回かかった費用は
namcoコントローラー \1,300
ポッ拳コントローラー  \800
セイミツ工業のφ30 はめ込み式ボタン \240 x 2 = 480
送料やコード、ダイオードなど含めると、合計で\5,000位かなといったところです。

【お知らせ】
YouTubeでもX68000に関する動画を配信しております。よろしかったらこちらもどうぞ。 www.youtube.com